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「旅志貫徹(りょしかんてつ)」 

 
 高校時代にふたつの夢があった。今から40年ほどの前の話です。紀伊半島先端の町に生まれ育った僕は、黒潮洗う海岸を眺め、水平線のかなたにあるアメリカをイメージしながら、大きな夢を描いていた。

 その夢のひとつは、ヨーロッパ・アジア放浪、もうひとつは書店のオヤジになることだった。高校2年のとき、小田実さんのベストセラー「何でも見てやろう」を読んで、どえらい興奮。「よしゃ、俺も世界へ行ったろやないかい!」と天井に向かって叫んだ。

 夏休み、自分の部屋のベッドで扇風機をかけながらこの世界一周旅行記を読んでいたのだが、あまりの破天荒、しかし哲学的な含蓄のある文章に、汗腺ゆるゆる汗がドタリと全身から噴出したほどだった。僕の高校時代、まだ海外旅行は自由化されていなかった。

 が、周りにその計画を話すとみんな興味を示してくれた。さすが移民の歴史がある我が熊野の民。そのDNAは僕の夢を後押ししてくれたのだった。「アメリカに行ったらの、ロスに従兄弟がおるさか、会いに行ったって」と近所のおばさんから言われた。
 
 大学は旅を考えて、全部語学系を受けた。幸いに立教の英米文学科に入学(1クラス、女50人男4人という女子大のような雰囲気でありました)。

 旅行資金を貯めるために家庭教師をし、英語の勉強に励んだ。少しずつ面白い情報も集まり始めた。強く念じると情報はやって来る。大きな夢があると物事はスムーズに進むもんだと実感した(この法則は今も堅持)。
 
 そして出発の1970年がやってきた。1年休学の手続きを完了。許されたドルへの両替は1000ドルだけだった。1ドルは360円、しかもパスポートにその額がしっかりと記入された時代だった。      

 忘れもしない1970年4月26日、うんこ色のキスリングにいっぱい夢を詰め、小雨煙る横浜港からハバロフスク号に乗ってソ連のナホトカに向かった。当時日本からヨーロッパへ行くのは、このシベリア鉄道経由が一番安かった。僕と同世代のおもろい日本人乗客が多く、楽しい船旅だった。

 モスクワからレニングラード(現サンクトペテルブルグ)を経由し、フインランドのヘルシンキに汽車で到着。そこから僕のヒッチハイクが始まった。北欧からドイツ、スイスを抜けイタリア、ギリシャ、スペイン、北アフリカを9ヵ月間ビンボー旅行。

 宿泊場所はユースホステルか安宿、あるいは野宿だった。ヒッチハイカーの間では、公園で野宿することを「パークホテルに泊まる」といい、同じように「ステーションホテル」「リバーサイドホテル」などともね。リュックの重きに汗流し、財布の軽ろきに冷汗を流す旅が続いた。

 ヨーロッパの旅に続き、イスタンブールから陸路でインドへ向かった。トルコ、イラン、アフガニスタン、パキスタン、インド、ネパール・・・。2カ月間のハードでハッピーな旅だったなあ。このアジア・ハイウェイを放浪したことで、僕は旅のノウハウをすべて学んだと思う。

 僕のトラベルライター人生は、この体験抜きには考えられない。帰国して旅で出会った友人たちと世界初のアジアハイウェイ・ガイドブック「お前も来るか!中近東 1日1ドルの旅」(まるこぽーろ旅行団出版局)を自費出版し、九州まで国内を行商し3000部も売った。

 その5年後、会社を辞めて妻と9ヵ月間世界一周もやってしまった。現在までに雑誌などの取材を含め、回った国は90カ国、渡航体験は110回となった。

 さて、もうひとつの夢はどうなった、かといいますと、それは昨年夏に夢が実現したんです。自分のホームページを立ち上げ、オンラインでの古本屋を始めたのだ。店の名前は旅好堂。(りょこうどう)ロゴマークは椰子の樹。

 古本といっても初版本など高尚な書籍を扱うのではなく、得意分野の旅に関する書籍の販売である。今までに僕が集めた紀行文、歴史書、写真集、あるいは現地で購入したガイドブックなどを、僕は「旅本」と定義し売り始めた。

 まだラインナップは700冊と少ないが、僕はすべての本に紹介文や書評を書き込んでいる。普通の書店のように手にとって本を確認できないために、本の感じが分かるように説明したつもりだ。

 古本だけのサイトでは面白くないので、自分の紀行文、海外に住む僕の友人のエッセイなども連載している。アラスカ、ミズーリー、フランス、ケニヤなどに住む、あるいは旅行している友人たちの生き生きとしたエッセイがどんどん送られてくる。

 メールで旅のあれこれ、旅本の話をしていると、10年来の友人のような気になってくる。まさにIT時代。人と人の繋がりは面白い。

「大人組」3号(ジ アース)2004年8月発行から転載


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Comments

gohさん、ブログの開設おめでとうございます。
これからの記事、楽しみに待っていますね。

Posted by: naomi | November 17, 2004 at 01:07 AM

naomiさん、コメントありがとう。
そして、親切な説明をメールでありがとう。
参考になります。ブログ初心者をよろしく。

Posted by: goh | November 17, 2004 at 10:26 AM

1970年代初頭までは、世界はまだ平和だったんですね。
いまでは、とてもできないですね。

Posted by: Sao Paulo | November 17, 2004 at 11:16 PM

Sao Pauloさん
初めまして。ブラジルのパラナ州にお住まいですか?
今年6月に、ボリビアとの国境近くの大湿原パンタナールに
行ってきました。ブラジルはスケールが大きく、面白い国ですよね。

 そういえば、以前、F1のブラジル・グランプリがサンパウロで開催されたとき、取材に行きました。ちょうど、サンパウロ出身のセナが30歳の誕生日の時でした。

サーキットでセナの広報担当者に気に入られ、セナの誕生パーティに招待されました。そのとき彼のサインをもらい、それは我が家の家宝です。今年、セナ没後10周年ですよね。ブラジルのあちこちで、セナの写真とか似顔絵を見ました。また立ち寄ってください。

Posted by: goh | November 18, 2004 at 12:21 PM

JUNさん

あなたのブログにも書き込みましたが、僕は1970年、マドリのカサデ・カンポのYHの2代目番長です。

あなたのおかげで、僕らが作った「おまえも来るか!中近東」がこれほど知られていたとは?
ちょっと感動しました。謝謝。

Posted by: goh | March 13, 2005 at 05:05 PM

ゴウ様! 冒頭から夢や希望、熱い気持ちがよみがえってきて、ワクワクしちゃいました!! ブログ、これからも楽しみにしています!

Posted by: ヨウコ | July 18, 2006 at 11:53 PM

Who knows where to download XRumer 5.0 Palladium? Help, please. All recommend this program to effectively advertise on the Internet, this is the best program!

Posted by: CocoChanels | June 26, 2009 at 10:31 PM

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